ツンツン元親とデレデレ元就
元親は、毛利には冷たいが俺達には普通の態度で接してくる。俺なんて何度か船旅に誘われたし、真田もその忍もカジキマグロ食いに来いと笑顔で言われたらしい。前田の風来坊とはよく城や花町で朝まで飲み明かすようだし、他の奴等にも友好的な対応をするくせに、毛利だけには冷たい。
以前、風来坊と元親が飲んでいるところに邪魔したことがあるが、その時に一度だけ聞いてみた。
単に気にくわねぇからだと元親は言っていたが、その横で慶次が楽しそうに笑っていたのがどうにも気になる。まあ、俺も大体見当はついているが、しかしそれならば尚更少しでも優しくしてやればいいのにと思う。
つまり元親は、毛利を好いているのに素直になれないから冷たくしてしまうのではないか、と。
確かに毛利が気に食わないって言うのはよく分かる。アイツは人として大切なheartってもんをなくしちまっているからだ。―――と俺も思っていた。だけど実際、毛利は毛利で国や民のことを考えているんだ。やり口だって汚いわけじゃない。攻め入る敵や攻め込む敵に対して、正々堂々と毛利の誇る詭計で鮮やかに立ち向かっている。
表情はいつでも作られたものだし、心の内を吐露するなんてそうそうないことだが、元親は毛利の一番近くにいる好敵手だ。かつて瀬戸内海の覇権をかけて幾度も争った仲だけに、恐らく毛利のことは元親が誰よりもよく知っている。
それに毛利は…。
「What is this?」
元親が奥州まで訪ねてきた時、珍しく上物の肩衣袴をきっちり身に着けていたもんで思わず訊いた。
「あ?ああ…これか」
こいつは異国語は分からないが、俺の視線が元親の顔から外れていたからすぐに分かったようだ。何か重要な用事でもあるのかと問うたら、元親は首を横に振った。
「毛利から贈られて来た」
「は…、………え?」
何故毛利の名を出したそこでわざわざ仏頂面になる必要があるのかと思ったが、贈られて来て少しでも嫌だと感じたのならば着ずに送り返せばいいだけの話だ。それをわざわざ見せびらかしに来るなんて一体どういうつもりだ。律義に七つかたばみの家紋が入った着物は、どう見ても気に入って着用しているようにしか見えない。
「…真田達みてぇな反応すんなよな」
「いや普通の反応だろ…つーか」
ここに来る前に真田にも披露したのか。
それにしても物凄く仕立てが良い。正直、元親になんて勿体無いくらいだ。毛利も毛利で何考えてんだ……いや、元親のことしか考えてねぇのは分かってるんだがよ。
「そんなに嬉しかったのかよ…毛利からの贈り物」
「はあ?嬉しくなんかねぇよ」
その割に各地を自慢して回ってるみたいじゃねぇか。多分風来坊のところにも行ったんだろうな。
「…で、今回は何しに来たんだ?」
元親が奥州に来るときは、大抵何かするわけではなく、ただ釣りしたり酒飲んだり飯食ったりして数日で帰る。今回もどうやらいつもどおりのようで、航海の途中で小十郎の野菜で作られた美味い飯を食べたくなったからただ寄っただけらしい。
それは建前で、単に自慢したかっただけだろうが。
「Ah…まあ良いんだけど…今度からは来ること予め教えろよ」
「なんだ、何かあんのか?」
そりゃあ突然来るのと事前に知っているのとじゃ心構えが違う。まあそういうことじゃなくて。
「次は毛利も呼んでおくから」
「いらねぇよ!」
「……………」
あーもーこいつら早くくっつかねぇかなぁ。
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元親がただのツンデレになった気がしないでもありません。
元親←元就と言うか元親⇔元就でお付き合いはまだしてません。BHの元親ストーリー補完妄想だぜ!
ここからどんどんデレ元親のターン!