親就が熱い
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練習前の部室は緊迫していた。スタメン五人の内三人が剣呑な雰囲気を醸し出していると言う最悪ぶりだ。一、二年の部員達は早々に体育館へ逃げ、残された慶次は困り果て、佐助は大量の冷汗をかいていた。
結論として、元就は来週の練習試合を見に来てくれることになった。昨日は元就と元親、幸村の三人所か追い付いた佐助と慶次も含めた五人で一緒に帰るハメになったのだが、まあそれは良い。
元就は、元親と幸村、どちらかの誘いに乗ったと言う訳ではなかった。
「…かすがを誘う時に毛利も一緒に誘ったって言えよテメェ…何が『元親次第』だ」
「いやぁ、たまたまだよ、かすがと毛利さんが一緒にいたから…」
「某がお誘いする前に…佐助…」
「まあまあまあまあ結果オーライじゃない!」
元親と幸村の二人から睨まれ、佐助は焦りながら弁明を試みた。
つまり、元親をけしかけた佐助が、その実もう既に元就を誘っていたのだ。勿論故意にそうした訳ではなく、話した通りかすがを誘った時にたまたま一緒にいたから、元就もかすがと二人で見にこないかと尋ねただけだが。あえて元親にそれを伝えなかったのは、元就へのアクションのきっかけをと思った佐助の優しさである。と本人は主張する。
確かに結果オーライだが、二人にしてみれば納得は出来ない。だがその様子を見て、元親と幸村は互いの本気を改めて感じた。
「…仕方ねぇ、この決着は試合で」
「望む所でござる」
二人共、自分の気持ちを周りにさらけ出してしまえば、後はもう止まることを知らないらしい。つい先日まで毛利なんて好きじゃない!破廉恥でござる!等と喚いていた彼等の面影はどこにもない。
睨み合いながら熱苦しく燃え、部室を出て行った元親と幸村を見送った佐助は、もう一人の面倒臭い男に視線を移した。政宗だった。
「政宗は行かねぇの?」
二人の相手をして疲れた佐助が見守る中、見るからに不機嫌にしている政宗に勇気を出して慶次が声をかけた。若干引き気味なのは本気で怒る政宗が怖いからである。
「…チッ」
しかし政宗は返事をしてくれなかった。大きな舌打ちだけをして部室を後にした。
「…………」
「…俺らも行こうか」
「……そうだね」
静かになった部屋で慶次と佐助は顔を見合わせ、同時に溜め息を吐いた。何故こうなってしまったのか、数週間前まではこんな険悪なムードになどならなかったのに。
本人は全くそんな人種とは程遠いのだが、彼等は最早こう思うしかなかった―――毛利元就は魔性の女である、と。
練習試合が三日後に迫る頃には、流石の元親達も練習に集中していた。バスケットボールだけでなく、スポーツはチームワークが何よりも重要である。部活外ではまだ若干の確執はあるものの、部活中は皆、女の悩みなど一切出さずに練習に打ち込んだ。
対戦相手の無双高校は、婆娑羅高校と同じく全国大会の常連である。ゴール下の守護神とまで言われる島左近をはじめ、一癖も二癖もある選手が揃っている。攻撃に特化した婆娑羅高校とは違い、攻撃も守備もバランスの良い無双高校は婆娑羅高校の一番のライバル校であった。故に負ける訳にはいかない。
「十分間休憩!その後走り込み外周!」
チーム戦のゲームが終わると、元親の声が体育館に響いた。
幸村が一目散に外に設置された水道へ駆けて行くのはいつものこと。各々水分補給等に散って行く部員達を見渡しながら、元親も着ていたTシャツで額の汗を拭って水分を取りに行く。部員、特に一年生が厳しい練習についてこれているかを気にかけるのも部長の役目だ。しかしそうして視線を巡らせている途中、突如として体育館の入口に意識が釘付けになった。
「――――……」
途端に動きがぎこちなくなる。隣りにいた慶次が何事かと元親を見ると、すぐに原因が分かった。
「あれって…」
元親が向くに向けない意識の先に、元就の姿があった。
元親のこういう所が駄目なのだと慶次は思う。折角吹っ切れたと言うのに、先日五人で帰った時もそうだったが、元親は元就本人を目の前にするとガチガチに緊張して極端に口数が少なくなる。勢いでいける場合は良いが、しかし普段通りの態度で接すれば元就とももっと近付けるだろうに、勿体ないことをする男だ。
「…ん?」
不意に、体育館全体が緊張感を帯びた。広い館内なのに全体が凍り付くような異様さが入口辺りから漂ってくる。他の部員達のざわめきすら小さくなって消えて行く中、一体何だと元親も慌ててそちらを見やると、元就の前に政宗が仁王立ちしていた。
「帰れよ」
用件も聞かずに政宗が第一声を発した。二人の間に何があったのかは想像するしかないが、それにしても政宗の様子は尋常じゃない。元就の名前を出すだけで不機嫌になる彼の目の前には、今その元就がいるのだ。
政宗の恐ろしい程の怒気にあてられれば並大抵の女子ならばすぐに腰を抜かして泣いてしまうだろう。しかし元就は負けていなかった。
「言われずとも用事が済めばすぐに帰る」
「何の用だよ、練習の邪魔なんだよテメェは」
「そうか、休憩を見計らって来たつもりだったのだが、それでも邪魔をしたと言うのならすまぬな。だがそもそも貴様に用はない」
政宗の奥歯が、ぎ、と鳴った。
「我に早く帰って欲しければ一々突っ掛かるな、餓鬼めが。―――猿飛」
「…はいは~い」
元就に呼ばれ、佐助が渋々と前に進み出た。
政宗を置いて元就と佐助が何かを話している。そして数枚の書類を佐助に手渡すと、言葉通りすぐに元就は政宗に一瞥もくれず踵を返した。
ギリギリと拳を握り締めた政宗が叫んだ。
「Fuck!!二度と来んじゃねぇ!」
余裕のない政宗は珍しい。どうにも空回りしているようにしか見えない彼に、部員達は戸惑いを隠せなかった。
すると元就は足を止めて政宗を振り返った。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
「―――二度と、は無理だが、貴様など我の眼中にもないゆえ安心せよ」
「―――――っ」
冷た過ぎる眼に、政宗は息を飲んだ。
元就が静かに去って暫く、体育館は嫌な静寂に包まれていた。
それにしたって、政宗の態度は酷過ぎる。元親は気を持ち直すと急いで元就の後を追って外へ出た。
どんなに気が強くても元就は女性なのだ。もしかしたら傷付いているかもしれない。近くにいたにも関わらず、何のフォローも出来なかった元親はもういても立ってもいられなかった。
「あ、毛利――――」
果たして、出て行った先に元就はいた。声をかけようと口を開いた元親だったが―――元就の横にいる幸村の姿に気付いて固まった。
「どうして元就殿がこちらに…」
幸村はちょうど水道から体育館に戻ってくる所だったようだ。元親は咄嗟に、二人からの死角に身を隠した。
「ああ、猿飛に渡すものがあってな」
「佐助に…ですか」
幸村は、ならば某に…と小さく零した。よく聞こえなかったらしい元就は、何かを言いたそうにしている幸村に首を傾げる。
「あっいえ…元就殿は佐助と…仲が良いのですね…、……」
「え?」
「いやっあ、何でもっ…!」
焦って言葉尻が消えた幸村に、言いたいことが分かったのか元就は小さく笑ってみせた。幸村の顔が仄かに赤くなる。
「安心せよ、そなたから猿飛を奪ったりなどせぬ」
「えっ!」
だがとんだ勘違いだ。
幸村は違うとも否定出来ず、よく分からない声を発しながら俯いた。
確かに佐助と幸村は先輩、後輩の仲を越えた家族のような間柄だが、幸村が言いたいのは佐助のことではなく、目の前の、
「これからまだ練習なのだろう?我はそろそろ帰らねば………あの男が煩いしな」
「、あ、あ、はい!」
元就の最後の呟きが聞こえなかった幸村は背筋を伸ばした後、何故かありがとうございますと大袈裟に頭を下げた。それを疑問に思いつつも、機嫌の良さそうな元就は「では」と言ってその場を後にする。どうやら元親の心配は杞憂だったようだ。
数歩進んだ所で、「元就殿!」と幸村が叫んだ。
「ん?」
「…み、見ていて下され、元就殿!某、必ずや無双高校に勝利してみせましょうぞ!」
「…………」
高らかに宣言した幸村は素直だ。
「…楽しみにしておる」
そして幸村に微笑み返した元就は穏やかだった。
他の誰も入り込めないような空気を作り出す二人に、元親は立ち尽くす。
結局、声すら掛けられなかった。平気なフリをしていても、内心政宗に対して思う所も多いだろう。しかしその激情をおくびにも出さず他人とにこやかに接せられるのは、相手が幸村だからだ。
元親は、自分が元就を呼び止めても上手い言葉の一つも出ないと自覚していた。だが追いかけずにはいられなかった。しかしこれが結果だ。
元就は初めて出会った頃の元親のことなんて覚えてもいないだろう。
「…………」
試合を見に来て欲しいと、確かに元親も言った。だが、元就が見に来るのは幸村だ。
試合はもう三日後だと言うのに、元親の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
結論として、元就は来週の練習試合を見に来てくれることになった。昨日は元就と元親、幸村の三人所か追い付いた佐助と慶次も含めた五人で一緒に帰るハメになったのだが、まあそれは良い。
元就は、元親と幸村、どちらかの誘いに乗ったと言う訳ではなかった。
「…かすがを誘う時に毛利も一緒に誘ったって言えよテメェ…何が『元親次第』だ」
「いやぁ、たまたまだよ、かすがと毛利さんが一緒にいたから…」
「某がお誘いする前に…佐助…」
「まあまあまあまあ結果オーライじゃない!」
元親と幸村の二人から睨まれ、佐助は焦りながら弁明を試みた。
つまり、元親をけしかけた佐助が、その実もう既に元就を誘っていたのだ。勿論故意にそうした訳ではなく、話した通りかすがを誘った時にたまたま一緒にいたから、元就もかすがと二人で見にこないかと尋ねただけだが。あえて元親にそれを伝えなかったのは、元就へのアクションのきっかけをと思った佐助の優しさである。と本人は主張する。
確かに結果オーライだが、二人にしてみれば納得は出来ない。だがその様子を見て、元親と幸村は互いの本気を改めて感じた。
「…仕方ねぇ、この決着は試合で」
「望む所でござる」
二人共、自分の気持ちを周りにさらけ出してしまえば、後はもう止まることを知らないらしい。つい先日まで毛利なんて好きじゃない!破廉恥でござる!等と喚いていた彼等の面影はどこにもない。
睨み合いながら熱苦しく燃え、部室を出て行った元親と幸村を見送った佐助は、もう一人の面倒臭い男に視線を移した。政宗だった。
「政宗は行かねぇの?」
二人の相手をして疲れた佐助が見守る中、見るからに不機嫌にしている政宗に勇気を出して慶次が声をかけた。若干引き気味なのは本気で怒る政宗が怖いからである。
「…チッ」
しかし政宗は返事をしてくれなかった。大きな舌打ちだけをして部室を後にした。
「…………」
「…俺らも行こうか」
「……そうだね」
静かになった部屋で慶次と佐助は顔を見合わせ、同時に溜め息を吐いた。何故こうなってしまったのか、数週間前まではこんな険悪なムードになどならなかったのに。
本人は全くそんな人種とは程遠いのだが、彼等は最早こう思うしかなかった―――毛利元就は魔性の女である、と。
練習試合が三日後に迫る頃には、流石の元親達も練習に集中していた。バスケットボールだけでなく、スポーツはチームワークが何よりも重要である。部活外ではまだ若干の確執はあるものの、部活中は皆、女の悩みなど一切出さずに練習に打ち込んだ。
対戦相手の無双高校は、婆娑羅高校と同じく全国大会の常連である。ゴール下の守護神とまで言われる島左近をはじめ、一癖も二癖もある選手が揃っている。攻撃に特化した婆娑羅高校とは違い、攻撃も守備もバランスの良い無双高校は婆娑羅高校の一番のライバル校であった。故に負ける訳にはいかない。
「十分間休憩!その後走り込み外周!」
チーム戦のゲームが終わると、元親の声が体育館に響いた。
幸村が一目散に外に設置された水道へ駆けて行くのはいつものこと。各々水分補給等に散って行く部員達を見渡しながら、元親も着ていたTシャツで額の汗を拭って水分を取りに行く。部員、特に一年生が厳しい練習についてこれているかを気にかけるのも部長の役目だ。しかしそうして視線を巡らせている途中、突如として体育館の入口に意識が釘付けになった。
「――――……」
途端に動きがぎこちなくなる。隣りにいた慶次が何事かと元親を見ると、すぐに原因が分かった。
「あれって…」
元親が向くに向けない意識の先に、元就の姿があった。
元親のこういう所が駄目なのだと慶次は思う。折角吹っ切れたと言うのに、先日五人で帰った時もそうだったが、元親は元就本人を目の前にするとガチガチに緊張して極端に口数が少なくなる。勢いでいける場合は良いが、しかし普段通りの態度で接すれば元就とももっと近付けるだろうに、勿体ないことをする男だ。
「…ん?」
不意に、体育館全体が緊張感を帯びた。広い館内なのに全体が凍り付くような異様さが入口辺りから漂ってくる。他の部員達のざわめきすら小さくなって消えて行く中、一体何だと元親も慌ててそちらを見やると、元就の前に政宗が仁王立ちしていた。
「帰れよ」
用件も聞かずに政宗が第一声を発した。二人の間に何があったのかは想像するしかないが、それにしても政宗の様子は尋常じゃない。元就の名前を出すだけで不機嫌になる彼の目の前には、今その元就がいるのだ。
政宗の恐ろしい程の怒気にあてられれば並大抵の女子ならばすぐに腰を抜かして泣いてしまうだろう。しかし元就は負けていなかった。
「言われずとも用事が済めばすぐに帰る」
「何の用だよ、練習の邪魔なんだよテメェは」
「そうか、休憩を見計らって来たつもりだったのだが、それでも邪魔をしたと言うのならすまぬな。だがそもそも貴様に用はない」
政宗の奥歯が、ぎ、と鳴った。
「我に早く帰って欲しければ一々突っ掛かるな、餓鬼めが。―――猿飛」
「…はいは~い」
元就に呼ばれ、佐助が渋々と前に進み出た。
政宗を置いて元就と佐助が何かを話している。そして数枚の書類を佐助に手渡すと、言葉通りすぐに元就は政宗に一瞥もくれず踵を返した。
ギリギリと拳を握り締めた政宗が叫んだ。
「Fuck!!二度と来んじゃねぇ!」
余裕のない政宗は珍しい。どうにも空回りしているようにしか見えない彼に、部員達は戸惑いを隠せなかった。
すると元就は足を止めて政宗を振り返った。その顔にはうっすらと笑みが浮かんでいた。
「―――二度と、は無理だが、貴様など我の眼中にもないゆえ安心せよ」
「―――――っ」
冷た過ぎる眼に、政宗は息を飲んだ。
元就が静かに去って暫く、体育館は嫌な静寂に包まれていた。
それにしたって、政宗の態度は酷過ぎる。元親は気を持ち直すと急いで元就の後を追って外へ出た。
どんなに気が強くても元就は女性なのだ。もしかしたら傷付いているかもしれない。近くにいたにも関わらず、何のフォローも出来なかった元親はもういても立ってもいられなかった。
「あ、毛利――――」
果たして、出て行った先に元就はいた。声をかけようと口を開いた元親だったが―――元就の横にいる幸村の姿に気付いて固まった。
「どうして元就殿がこちらに…」
幸村はちょうど水道から体育館に戻ってくる所だったようだ。元親は咄嗟に、二人からの死角に身を隠した。
「ああ、猿飛に渡すものがあってな」
「佐助に…ですか」
幸村は、ならば某に…と小さく零した。よく聞こえなかったらしい元就は、何かを言いたそうにしている幸村に首を傾げる。
「あっいえ…元就殿は佐助と…仲が良いのですね…、……」
「え?」
「いやっあ、何でもっ…!」
焦って言葉尻が消えた幸村に、言いたいことが分かったのか元就は小さく笑ってみせた。幸村の顔が仄かに赤くなる。
「安心せよ、そなたから猿飛を奪ったりなどせぬ」
「えっ!」
だがとんだ勘違いだ。
幸村は違うとも否定出来ず、よく分からない声を発しながら俯いた。
確かに佐助と幸村は先輩、後輩の仲を越えた家族のような間柄だが、幸村が言いたいのは佐助のことではなく、目の前の、
「これからまだ練習なのだろう?我はそろそろ帰らねば………あの男が煩いしな」
「、あ、あ、はい!」
元就の最後の呟きが聞こえなかった幸村は背筋を伸ばした後、何故かありがとうございますと大袈裟に頭を下げた。それを疑問に思いつつも、機嫌の良さそうな元就は「では」と言ってその場を後にする。どうやら元親の心配は杞憂だったようだ。
数歩進んだ所で、「元就殿!」と幸村が叫んだ。
「ん?」
「…み、見ていて下され、元就殿!某、必ずや無双高校に勝利してみせましょうぞ!」
「…………」
高らかに宣言した幸村は素直だ。
「…楽しみにしておる」
そして幸村に微笑み返した元就は穏やかだった。
他の誰も入り込めないような空気を作り出す二人に、元親は立ち尽くす。
結局、声すら掛けられなかった。平気なフリをしていても、内心政宗に対して思う所も多いだろう。しかしその激情をおくびにも出さず他人とにこやかに接せられるのは、相手が幸村だからだ。
元親は、自分が元就を呼び止めても上手い言葉の一つも出ないと自覚していた。だが追いかけずにはいられなかった。しかしこれが結果だ。
元就は初めて出会った頃の元親のことなんて覚えてもいないだろう。
「…………」
試合を見に来て欲しいと、確かに元親も言った。だが、元就が見に来るのは幸村だ。
試合はもう三日後だと言うのに、元親の頭の中はぐちゃぐちゃだった。
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