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親就が熱い
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バスケ部3話目



 久し振りに身の入った練習を終え、部室で汗に濡れたTシャツを脱ぐ元親に射抜かんばかりの視線を向ける男がいた。既に着替え終わり、ベンチで脚を組みながら踏ん反り返る政宗であった。
 初めは気付かないフリをしていた元親だが、着替え中ずっと見られているのは気分が悪い。「何だよ」と声を掛けると、政宗は顔をしかめて舌打ちした。
 政宗は元親から視線を外すと今度は、整理体操と称して物凄い勢いの腹筋運動をしている幸村を睨む。もう殆ど皆着替え終わっているにも関わらず、幸村の着替えはまだまだ先になりそうだった。
 先程から不機嫌に顔を歪めている政宗の視線の先の共通点と言えば、考えるまでもなく毛利元就である。
「…政宗」
「んだよ」
 元親は、練習に身が入っていなかったことを悪いと思っている。部長なのにこんな様では部員達に示しがつかない。副部長の政宗にも迷惑をかけた。だから、明日からもしっかり集中するからその不機嫌を直せと言おうとしたが、それならば何故幸村を睨む必要があるのだろうかと、ふと疑問が浮かんだ。
 確かに元就の件で幸村を正視出来なかった元親だが、政宗の怒声が幸村に飛んだ記憶は特にない。とすれば幸村はいつものように全力で真面目に部活へと取り組んでいたのだろう。ますます謎が深まる。
「だから何だっつってんだろが」
「…いや…」
 いつも口調も目付きも悪い政宗だが、機嫌が悪い時は更に酷くなる。そういえば、あの牛丼屋でもそうだった。元就の話題を出した途端に目に見えて不機嫌になった。部活中元親に怒っていたのは至極真っ当な反応だが―――。
「おやっ!」
「ん?」
「かたっ!」
 唐突に幸村の声が響いた。この掛け声は腹筋終了の合図のようなものだ。
「さばぁぁああああ!!」
 最後の叫び声と共に幸村が勢いよく立ち上がった。そのまま「うおおおお」と声を上げながら汗だくのTシャツを脱ぎ捨てて体を濡れたタオルで拭いていく。
「佐助!制汗スプレーを!」
「はいよ」
 先輩なのに何故か後輩の幸村の言う通りに動く佐助は最早このバスケ部では見慣れた光景だった。用意周到に手渡された無臭の制汗スプレーを、つけすぎではないかと思う程満遍なく体中に撒いた幸村は、一度咆哮してからワイシャツを羽織った。
「うるせぇぞ真田ぁ!」
 そして政宗の堪忍袋はぶち切れる寸前らしい。
「すっすみませぬ!某興奮が収まらずっ…」
 律義に政宗に謝った幸村には、やはり違和感があった。そもそも、制汗スプレーなどとは縁がないと思われる熱血馬鹿である。わざわざ佐助に用意させてまでつけるものでもない。幸村は確かに試合後は興奮醒めやらぬ様子で始終落ち着かないが、今日の練習でそれほど本気になる出来事があった訳ではない。
「興奮って?」
 嫌な予感がして元親が尋ねた。すると幸村は、頬を染めて言った。
「こ、これから元就殿をお誘いするのです!今日は図書委員の仕事で下校が遅くなるらしいので、一緒に帰る約束をしていて…」
 衝撃の事実に元親は数秒固まった後、佐助と慶次に振り向いた。佐助は必死に知らないと首を横に振り、慶次は顔を引きつらせながら笑っていた。
「も、元就殿と二人きりで帰るなんて…き、緊張してしまい、更に試合を見に来て欲しいと誘うのも、某…」
 目を伏せぐっと拳を握り締めた幸村だったが、意外にも言葉を遮った政宗の声に顔を上げた。
「女なんて呼ぶんじゃねぇよ。しかも毛利だぁ?士気が下がんだろ」
「いや、幸村と元親の士気はバリバリ上がると思…」
「Shut up!!」
 またもや気の抜けた声で突っ込んだ慶次を政宗は撥ね付けた。幸村に気が気でない元親だったが、それよりも政宗が異様な程に元就を厭う理由が気になった。
「まぁまぁ良いじゃないの、何もベンチまで連れて来て見せる訳でもないし」
 それに観客には女の子も一杯いるでしょ、と佐助がフォローするが、政宗は意見を変えないようだった。
「アイツが目に入るだけで苛々すんだよ。呼ぶなんて許さねぇからな」
 子供のような言い分で話を強引に終わらせた政宗は、鞄を持ってさっさと部室を出て行ってしまった。まさか政宗が苛々するという私的な理由だけで呼ぶなと言われるとは思ってもいなかった幸村は愕然とする。珍しい政宗の姿に、四人は呆然と彼を見送った。
「……あれは…何かあったんだなぁ」
「何か、とは?」
 慶次のぼやきに、幸村が困惑した表情で尋ねた。何でもないよと濁す慶次に、佐助も幸村の着替えを促す。
 先程浮かんだ疑問の正体を知ってしまった元親は、そんな三人の声を後ろに聞きながら、複雑な心境を抱いていた。

 幸村のことは予想外過ぎて気付けなかったが、政宗はある意味分かりやすい。むしろ、自分と似た者同士だと元親は思った。
「………ライバルが…二人もいんのかよ…」
 それも、二人ともに身近な存在である。
「……………」
 元親は頭の中の靄を払うように激しく頭を振った。そしてしばし考えに耽った後、唐突に鞄を手にした。
「元親?」
「ちょ、鬼の旦那も帰るの……って、」
「幸村ぁ!」
「は、はいっ!」
 もう、意地を張っている場合ではなかった。声高に幸村を指名すると、元親は自棄気味に宣戦を叩き付けた。

「毛利を誘うのはこの俺だ!!」

「…………!?」
 目を丸くする幸村を置いて、元親は部室を飛び出した。
 卑怯でもいい。幸村や他のライバルを出し抜いてでも、手に入れたい。
 数秒後、後ろから幸村が猛スピードで追いかけてきた。だが負ける訳にはいかなかった。
「元親殿ッ!某も負けませぬぅぅああああ!!」
「うるせぇ!!俺だって負けるかってんだ!!」
 部活帰りの生徒達が、有り得ない速さで駆け抜けていく二人を見てあんぐりと口を開けていた。すぐに、校門の横に小さく元就の姿が見えて来る。元親も幸村もどちらも引く気はない。
「毛利ッ!!」
「元就殿ッ!!」
 驚いた顔でこちらを見る元就に、二人は同時に叫んだ。

「今度の試合見に来て下さいッ!!」





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