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親就が熱い
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9話はつまりこういう話でしたか…
現パロチカナリ+伊達



****************
「Hey、西海の鬼」
「独眼竜…奇遇だな!」
 元親が下校中の通学路でばったりと会ったのは、奥州高校に通う伊達政宗だった。
 西海高校に通う元親と政宗は高校こそ違うが気の置けない仲だった。東区と西区の族同士で起きた抗争にて、頭として本気の拳を交わし合って以来、交遊が続いている。
「以前話していた奴とはLoverになれたのか?」
「会って早々コイバナかよ…いや、進展はねぇけど…」
 自分と同等以上に強い相手を見ればたちまち血気盛んになる彼らも、普段は普通の男子高校生である。気になる相手の一人くらいて当然なのだが。
 しかし元親は、ある男とは好敵手になれなかった、と政宗に話したのだが、いつの間に恋人に変換されたのだろうか。否定をしない元親も元親だった。
「hum…一度くらい見てみてぇな、アンタの想い人ってやつをよ」
「気難しい男だぜ」
 その想い人の名を毛利元就と言うのだが、中学二年生からずっと想いを寄せているにも関わらず、まるで元親の想いには気付いていないように前方の高みばかり見ていた。
「あいつは俺を見ちゃいねぇんだ。どんなに足掻いたってするりと交わしやがる…」
「難儀だな、まあ頑張れよ」
「おう…」
 肩を叩く政宗に元親は力無く笑った。

 安芸高校は西海高校の隣町にあった。会おうと思えばすぐに行ける距離だったのに、その元就が安芸高校から大阪高校に転校するかもしれないのだと言う。
 なんとか理由を聞き出そうにも、元就はいつだって素っ気なかった。
「…あ」
 政宗と別れてから暫く歩いていると、前方から歩いてきた少年に目が釘付けになった。つい足を止めてしまった元親とは反対に、相手は目の前の元親に気付いてもいないような素振りで通り過ぎようとする。
 すれ違いざま、思わず手が伸びて元親は少年――――元就の手首を掴んでいた。
「……なんぞ、貴様」
「俺の顔を忘れたなんて言わせないぜ」
「…馬鹿か貴様は。そのようなことを申しておるのではない、離せ」
 さらっと罵倒されたが、聞こえなかった振りをして元親は小さく笑みを浮かべた。安芸高校と西海高校の丁度真ん中辺りに元親の家はあり、元就の家もほど近い場所に建っている。故に、下校時に鉢合わせることは割合多かった。
「毛利、俺から逃げるなよ」
「………とんだ自意識過剰よ。我がいつ貴様から逃げた」
「転校するんだろう」
「…………………」
 真剣な眼差しで見つめると、元就は一度きつく睨み返して、元親から視線を逸らした。
「毛利」
「―――――長曾我部」
「、え……」

 なおも食い下がろうとした元親は、元就の顔が視界いっぱいに映ったかと思えば、唇に柔らかな感触を覚えていた。


 呆然とする元親の前で、元就がこれ見よがしに制服の袖で唇を拭う。
「我は、貴様のそのなんでもかんでも先走った考え方が好かぬ。故に貴様も好かぬ」
 それだけ吐き捨てると、元就は元親の手を振り払い、元親の横をすり抜けていった。思い返せば、元就とは顔を合わせればいつも喧嘩ばかりで、冷静な心持で話したことなんて一度としてなかった。
「転校などせぬわ馬鹿者」
「えっ、も、毛利」
 元親が手を伸ばすも届かず、元就は近くに建っていた一軒家の中へ消えた。元親がここで元就と会えたのは、偶然でもなんでもない、知らぬ内に元就の家の前まで来ていたからであった。
「……なんだ…あいつ、転校しねえのか………なんだ…なんだよ…!」
 元親は拳を握りしめると、嬉しさのあまり元就の家に向かって叫びかけたが、寸での所で元就と初めてキスをしたことに漸く気付いて、顔を真っ赤に染めた。
 元就の唇はマシュマロのように柔らかかった。
「Shit、元親に先を越されちまった…、き、き、kissなんてアイツやるぜ…!」
 天を仰いで唇を押さえる、そんな元親を、帰った筈の政宗が電信柱の陰から見つめていた。

 

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