婆娑羅高校バスケ部

未送信メールに入っていた、登場しないのに元就総受けで佐→かすな高校生パラレルンルン。



「ばっ…そんなんじゃねーよ！」
　婆娑羅高校バスケットボール部部長の元親は、一瞬の内に顔を赤らめてテーブルを叩いた。十四時過ぎとは言え他の客が疎らなのは、ここが駅前からも住宅街からも離れた比較的広い店内の牛丼屋だからである。
　三年生の元親は、スターティングメンバーである他の三年の仲間と共に全国大会の上位に食い込む実力者だ。長身から繰り出されるダンクシュートは選手、観客を圧倒し、その雄姿を見たいが為に会場へ足を運ぶ者も少なくない。
　今この場に居るのは、知る人ぞ知る錚々たる顔ぶれであった。センターの元親に、パワーフォワードの前田慶次、スモールフォワードの猿飛佐助、シューティングガードの真田幸村、そしてチームの司令塔であるポイントガードの伊達政宗である。だが、部活の練習帰りにスタメンの五人がこうして集まって、普通の男子高校生と 何ら変わりない話で盛り上がるのはよくある事。
「まぁツンツンしたのが好きって言うのも分からなくはないけどねー」
　試合中でなくとも何を考えているのか分からない飄々とした態度で、佐助が笑った。新体操部のエース、かすがに彼は夢中である。
「可愛いって言うか美人だよね。怒ると怖いけど」
　女子と恋の話がバスケの次に大好きな慶次は、嬉々として元親に頷いて見せた。確かに美人だけど…と同意しかけるが、元親が言いたいのはそこではない。
「Ha、趣味悪ィんだよテメェは。大体アイツ美人かぁ？目付き悪ィし」
「政宗に言われたくないよなぁ…」
「Shut up!」
　尊大な仕草で言い捨てる政宗に、元親がむっとした。慶次が気の抜けた顔ですかさず突っ込んでくれるが、ムカムカとする腹は治まらない。すると、今まで特盛の牛丼を忙しく掻き込んでいた、スタメン唯一の二年生エース幸村が、でも、と口を開いた。
「とても優しい方でござる。先日図書室に用事があったのですが、その時偶々お会いして少しお話をしました。某…何かこう…胸を熱くするものが………」
　口の周りに米粒をつけているくせに、ぐ、と箸を握り締めて顔を赤らめる幸村が、今の元親には酷く漢らしく見えた。
　そして同時に焦りを感じる。まさか、女子の名前が話題に上るだけで「破廉恥！」と喚く幸村が、ただ頬を染め何かを噛み締めるように自身の思いを語るなど、今まで有り得なかった事だ。佐助が幸村の隣りで、もしかして旦那…恋しちゃったの！？と驚けば、いつものように「は、破廉恥でござる！」と叫んでテーブルに突っ伏した。
　元親が視線を感じてそちらを向くと、慶次がにんまりと腹の立つ笑顔を浮かべていたので「だから、」と続ける。
「ちげーっつってんだろ。ちょっと話に出しただけですぐ好きだの恋だの、接点もねぇし何を根拠に言ってんだ」
「元親が女の子の名前を出す事自体珍しいんだよ」
「目が違うしね～」
「だからっ」
　必死で否定するも、慶次と佐助は端から聞く耳を持たない。
「今度の練習試合、見に来てって誘ってみたら？元親の雄姿に惚れちまうかもよ！」
「俺もかすが呼んでみようかな」
「…………」
　勿論、元親の否定など真意を隠す為の上辺の言葉なので、他人の恋愛の機微には滅法鋭い慶次と佐助を相手に誤魔化す事など出来はしなかった。
　だがあっさりと認めるのが恥ずかしいのは、外見に似合わず元親もまた幸村と同じくウブだからである。
「…そ、それでは元親殿っ」
「…ん？」
「そ、そ、そ、某がっ、…てもよいでしょうかっ」
　いつの間にか牛丼を平らげた幸村が、改まって元親を見ていた。未だに米粒をつけて、一体何の事だと元親が首を傾げると、幸村は肩に力を入れた。

「某がっ、元就殿をお誘いしてもよいでしょうかっ！」

　幸村以外のスタメン四人は見事に固まった。
　何が起きたのか分からなかった。何故ならあの、幸村が――――、

　数秒後、漸く事の重大さを頭で理解出来た彼等が各々に驚愕する中、元親は引きつった顔で「嘘だろ……」と呟いた。



--------------------
因みに元就(♀)は部活には入っていません。図書委員で暇さえあれば図書室に入り浸っている本の虫。
実は政宗が元就に対してツンツンなのは以前告白したけどフラれた為です。まだ好きだけど素直になれないだけ。その裏事情を知ってから政宗の言動を改めて読み返すと、なんだか可愛く感じる不思議。
元就が幸村に甘いのは犬が好きだから(失礼)。狼も犬科だから元親にも希望はあると思います。
まさかの親→就←幸。(あ、政→就もか？)

しかし続きません…orz